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成人のアトピー性皮膚炎は、特定の年齢層に多い?
戦後、生活環境が大きく変わったころから患者数は増加している
成人のアトピー性皮膚炎の患者数は、日本が経済成長を遂げた昭和40〜50年代に育った30代以下の年齢の太に多いのが特徴です。
この病気の患者さんで戦前生まれの人は、ほとんどいません。
こうした特徴は花粉症にも見られます。
やはり戦前生まれの人で花粉症に苦しむ人はほとんどいません。
花粉症が見つかったのは昭和38年ですが、患者さんの増加にともない話題になり始めたのは昭和40年ごろのことです。
これは現在成人のアトピー性皮膚炎に苦しむ患者さんが生まれ、育ったころとほぼ同時期です。
では花粉症になると体内ではどのようなことが起こるのでしょうか?
花粉症は、吸い込んだ花粉が体内で異物と認識され、その反応として鼻や目の粘膜に炎症が起こり、くしゃみや鼻みず、涙などが出るといった症状が現れます。
この症状はIgE(アイジーイー)という物質が関係しています。
IgEとは、1960年代に石板公成氏によって発見された免疫グロブリンの一つで、体内に侵入してきた異物(アレルゲン)と闘う機能を持っています。
それで、花粉を吸い込んだときに体内で異物と認識して、花粉という異物と闘うために多量に放出されるのです。
そして放出されたIgEがヒスタミンなどの化学伝達物質を異物が混入した組織内に放出するのを促すため、目や鼻の粘膜に炎症を起こすのです。
IgEは花粉症の人だけではなく気管支ぜんぞ駕や薬疹の人も高い値を示します。
花粉症の人は、特定の花粉に反応するIgEをもっています。
つくり出す機能が特に高いため、測定すると非常に高い値が出ます。
生活環境の変化が、人の免疫系のはたらきを誤作動させている?
もともとIgEは、寄生虫と人間が共存するための抗体でした。
人糞を肥料にしていた昭和40年ごろまでは寄生虫をからだに飼っている人も多かったのです。
その後、人糞に替わって化学肥料が使われるようになりました。
この化学肥料が広く使われるようになった時期と同じころ、花粉症の患者さんが増えたことで注目されるようになりました。
東京医科歯科大学の藤田紘一郎氏は、この寄生虫と花粉症との因果関係に注目されました。
その説は次のようなものです。
人糞を使っていた時代には体内に寄生虫(異物)が入ってきた場合、IgEが免疫としてのはたらきを行い、寄生虫を処理していました。
それが化学肥料に替わってしまうと、寄生虫がいないため処理する必要もなく、IgEの仕事がなくなってしまいました。
その結果、IgEが消化器から粘膜に出てきて、スギ、ヒノキの花粉などに対して反応を起こし、鼻や目の粘膜に炎症を起こしているという考えです。
私はこの「人糞から化学肥料に替わったころから花粉症が増えた」という藤田氏の考えに同じです。
アトピー性皮膚炎も人糞から化学肥料に替わったころから患者数が増えています。
これも寄生虫を処理するといったIgE本来の寄生虫にたいする免疫作動物質としてのはたらきが、寄生虫が体内からなくなったことでIgEの仕事もなくなり、その結果、花粉症のように反応を起こし、皮膚に炎症を起こしているのではないかと考えるわけです。
顔のアトピー性皮膚炎は、心理的な原因によるケースがある
まさかと思われるかもしれませんが、「アトピー性皮膚炎になりたい」「敏感皮膚になりたい」とか「アトピー性皮膚炎を治したくない」という人が意外に多いのです。
この「なりたい」「治したくない」という気持ちは、大人のアトピー性皮膚炎の大きな心理的ファクターになっています。
こんな事例があります。
D子さんはアトピー性皮膚炎ですが、顔の症状がもっともひどく現れています。
医者のところに診察を受けに来られ、薬を塗り、日常のケアをきちんと行ってもらうことで顔以外の部分はきれいに治りました。
しかし、なぜか顔だけ治りません。
入浴の仕方、枕、布団など、気になるところはすべて改善してもらいましたが、いっこうによくならないのです。
日ごろの生活の仕方などきつく注意すると、次に来るときはよくなっているのですが、その次に来るときはまたひどくなっている、という繰り返しです。
そこで、家庭の状況など詳しく話してもらいました。
D子さんのお父さんは仕事が忙しく、残業ばかりで帰宅も遅い会社員。
お母さんは美容院を経営していて、毎日朝から夜まで休む暇がないほど忙しいというご両親でした。
お母さんが美容師さんならば洗髪はプロの技術でやってもらえます。
D子さんの顔の症状はシャンプー、リンスなどの刺激によるものではないかと気になっていたので、「お母さんに髪を洗ってもらいなさい」と指示しました。
すると、D子さんは「先生、母が洗髪してくれるように診断書のようなものを書いてください」と医者に頼んできたそうです。
医者はそれを書いて渡したところ、次の診察のとき、D子さんは二コニコと笑顔満面で、顔の症状もきれいに治っていました。
お母さんがいつも忙しくて、自分のことをかまってくれないことに不満、寂しさを感じていたD子さん。
「アトピー性皮膚炎になりたい」「とくに目立つところは治したくない」という気持ちが、症状を悪化させたり、治らないようにさせていたようなのです。
なぜならばD子さんの症状がひどいと、お母さんが「大丈夫?」とか、いろいろ声をかけてくれたり、あれこれ心配してくれるからです。
つまり、かまってほしさから、アトピー性皮膚炎を治したくなかったわけです。
そして、この診断書をもらったことで、毎日お母さんに頭を洗ってもらえ、かまってもらえると思うと心が満たされて、めきめきとよくなったようなのです。
このD子さんのように、かまってほしい、気にかけてもらいたい、心配してほしいという甘えの気持ちがあって、顔、首、手など目立つ部分の症状を治したがらない人は、大人のアトピー性皮膚炎の患者さんには意外に多いのです。
特定の部分の湿疹がひどくなることがある
アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は健康な皮膚の人に比べ、化学物質などの刺激に弱くなっています。
たとえば生活の中で何気なく触れていた合成皮革やプラスチック製品、またゴム製品に含まれている添加物など、意外なものが原因となって湿疹が出ることがあります。
ところがそのことを知らずに刺激となってるものを避けなかったために、湿疹がかなり悪化してから診察を受けるということも少なくありません。
実際にふだん何気なく使い、触れていたもので湿疹が出たいくつかのケースをご紹介しましょう。
ゴム手袋
結婚、出産を機に手の症状が悪化した女性の場合、話をよく聞いてみると、洗い物をするとき、洗剤やお湯で手が荒れるからとゴム手袋をしているといいます。
この場合、ゴム手袋のゴムが原因で、湿疹が悪化しているのです。
私はこれを「ゴム手皮膚炎」と呼んでいます。
ゴムが刺激になることは意外に知られておらず、手荒れは洗剤が原因と思い込んでいる人が多いようです。
この「ゴム手皮膚炎」は、症状がわかりやすい皮膚炎です。
決まったところに湿疹ができるので診察すればすぐにわかります。
医者は、症状を診て、生活の中でゴム手袋を使っていることがわかったら、ゴム手袋をやめて、プラスチック製の手袋(ポリエチレン製の手袋など)に替えてもらうよう指導しています。
ゴムが刺激になって皮膚の状態が悪化するというのは、「ゴム手皮膚炎」だけではありません。
ゴムが原因となって湿疹がひどくなるケースは、ゴム手袋に限らず意外に多いのです。
ふだん何気なく生活の中で使っているゴム製品ですが、ゴムは皮膚の状態を悪化させる一因となることを認識し、気をつけるべきです。
ゴム自体が危険なものであるというわけではありません。
ゴムそのものは悪くはなく、ゴムを固めて手袋などの形にするために、加工する際に混入される金属などの不純物に問題があるのです。
その不純物がゴム製品を身につけたとき、汗をかくと溶け出してきて皮膚を刺激するのです。
また、危険を防ぐためにゴム手袋の下に布の手袋をしても、汗は布の外に出てゴムを溶かし、手に戻ってしまいます。
ですから、汗や水を適す布の手袋をしてもゴム皮膚炎は防ぐことができないのです。
ゴム手袋以外に、合成ゴムでも湿疹が悪化することがあります。
合成ゴムが原因で悪化した例をいくつかご紹介します。
マウスパッド
D氏には、手のごく一部分しか症状が出ていません。
湿疹の出ている部分をよく見てみると、パソコン操作に使うマウスに触れる部分にだけ症状が出ていることがわかりました。
そこで、マウスにセロハンテープを貼ってもらいました。
マウスを触る手にもプラスチック製の手袋をするなどして、直接触れないようにしてもらったところ、症状はかなりよくなりました。
マウスの刺激による湿疹とよく似たところに出るのですが、マウスパッドでも湿疹が出ることがあります。
マウスパッドにはゴムが使われていることが多くてゴムが刺激となって湿疹を悪化させるのです。
パソコンをよく使う方で、手のあたりに湿疹ができている方は、いま=度、湿疹の出ている部分を確認してみてください。
自転車のハンドル
自転車のハンドルのゴムで湿疹が悪化する人もいます。
N氏は、手のひらに湿疹ができて診察に来られました。
毎朝駅まで自転車で通勤するN氏の症状は、ハンドルをもつ部分だけ湿疹がひどいのが特徴でした。
幸い早期にハンドルが原因とわかったので、ハンドル部分に絶縁テープ、あるいはセロハンテープを貼り、湿疹部分に薬をつけたところ、比較的早く治すことができました。
まさか自転車のハンドルが湿疹悪化の原因とは思われないからでしょう。
そのためにあれこれやってみても効果が現れず、ずっと悩んでいたという人は少なくありません。
そんな長年悩み続けていた人もN氏のようなケアを行うことで、2週間で湿疹がよくなったという例もあります。
食物アレルギーがアトピーに関係している場合も
子どものアトピー性皮膚炎は食物アレルギーが関与している場合があります。
そのなかでも卵と牛乳が原因として比較的多いとされています。
離乳食をはじめるときに、いきなり卵、牛乳を与えるのは、アトピー素因をもっている子どもには注意が必要かもしれません。
妊娠中にこれらの食物を摂った場合とそうでない場合の比較がドイツでなされましたが、生まれてきた赤ちゃんの食物アレルギーの頻度は変わりなく、また授乳に関しても有意差がないとの報告があります。
一方、母乳中にアレルゲンが分泌されるので控えたほうがよいとする報告もあり、さらに多くの症例で検討される必要があります。
いずれにしてもお母さんがよく観察して、この子は卵を食べさせると必ず強いかゆみが出るといった因果関係に気づいた場合には、
皮膚のスクラッチテストと呼ばれるもので、その食物に対するアレルギーの有無を検査しておくことをすすめます。


